21 記憶と記録・杏について

21 記憶と記録・杏について

 出回る季節が短くて仕入れなくちゃと思っているうちに終わっているもの、それが杏です。今年もうっかり季節を逃しそうでしたがアイスクリームでお世話になっている松本の村山人形店さんが規格外の杏を収穫して送ってくれました。仕込みに関してはかなり覚えている方ですが1年に一度しかしないようなことをどれだけ覚えているかというと自信なくなります。開店当時はそれが成功したかしないかは別としてなんでもノートに記録しながら作っていました。杏のことはどうしていたか2年前に書いたじぶんのメモが今年の私を助けてくれます。柔らかすぎてる杏はジャムにします。どこも柔らかくない丸い杏はコンポートにします。杏は洗ってくるりと円周に包丁を入れてあげるとぱかっと割れて種が取れます。種の中には杏仁が入ってます。めちゃくちゃ大変ですが店の前のコンクリのところで炎天下にえんえん杏の種割りしてほんの手のひらに収まる程度の杏仁を大事にミキサーに掛けまして作る杏仁豆腐のおいしかったことが思い出されます。気づいたら種を割って杏仁を一つ口に入れていました。そのままではおいしくないんですがまぎれもなく杏仁豆腐のかおりが爆発しました。わたしは結構なんでもかじりたくなってしまいます。杏はペクチンが豊富なのかレモンの種などいれずともジャムになります。コンポートは試行錯誤の結果、真空低温調理が一番良かったとの記録がありましたので温度や時間もメモの通りやったらうまくできました。いまだに失敗することもあるけれど、積み上がっていることもあるなと誇らしく思いました。それにしても杏は本当においしいです。生のままかじっても味も香りもそっけないんですが(最近は生食の品種もあるそうですね)加糖して加熱したら甘みも酸味も際立ち「杏だあ~!」となります。そのたびに杏が一番好きだーと思います。目の前にあるものにいつもそういう気持ちですがそのときは本気です。キビズベイクショップの杏のお菓子で今のこの季節が思い出になれば嬉しいです。

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